2018年1月1日月曜日

【アラバマ物語】ハーパー・リー(菊池重三郎訳・暮しの手帖社)

ようやく読み終わった。
できれば昨年中に読んでしまいたかった。
まあ、それはそれ。
ともかく、最後まで読めてよかった。

よく知られた、ハーパー・リーのピューリッツァー賞受賞作。
グレゴリー・ペック主演で映画化もされた。
映画もよかったが、映画だけではわからなかった世界が、原作本にはある。
それはあたりまえで、何といっても映画よりも原作のほうが分量もたっぷりあるのだし。

おそらく1950年代のアメリカ南部。
正義感の強い弁護士アティカスとその家族と隣人たちの物語。
そして同じ土地に住む色んな人達の。

映画を見たときは、人権を主題にして、差別の不合理さ、偏見の不条理さを描いたものだと思っていた。
たしかにそれはこの物語の一面ではある。
しかし、語り手であるスカウト(アティカスの娘)の目から見ると、どうなんだろうか。

倫理観というのはむずかしい。
ひとそれぞれ、価値観は違う。
育った環境が違うのだから、あたりまえなのだ。
そして、その土地のルールというのも、やはりあるのだなあ。

子供の頃は、正しいことをしていれば正しく生きられる、正直に生きていけば何もかもうまくいく、と思っていたけれど、成長するに連れて、それだけでは物事は収まらないということを知ってきた。
というか、ひとそれぞれで「正しさ」が違うということを知ってきたのだ。

こんなことは当然じゃないか、というのは一方だけの考え方かもしれない。
相手はそう思っていないかもしれない。
ということを考えないと、世界はおかしくなる。
自分だけが正義じゃない。じゃあ正義とは何なのだろう。

物語は終わっても、全てがすっきりとしたわけではない。
ここから先は、自分で考えよ、ということか。
年始めから、問題を突きつけられた。
はるか昔の作品から。

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ところで。
この作品、どうやら初版から翻訳は変わっていないらしい。
今となってはあまりにも古すぎる。
「鍾馗さまでも通さないわよ」
なんて、アメリカ人が言うわけがない(読めますか)。

出版社「暮しの手帖社」は、文芸出版は本分ではないはず。
(どういう経緯で出版することになったのだろう)
どこかの出版社が版権なり翻訳権なりを買い取って、新訳を出してくれないものだろうか。

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