2014年12月31日水曜日

【失踪者たちの画家】ポール・ラファージ(柴田元幸訳・中央公論新社)

これが本当に今年最後のアップになるでしょう。

ポール・ラファージという作家はよく知りません。訳者あとがきを読むと、柴田元幸さんもよくわからないようですが。しかし作品はとても面白いです。

どこかわからない都市。アパートの一室でスケッチをするフランク。向かいのアパートの窓に見える女性が忘れられなくなります。やがて町で偶然その女性に出会います。彼女プルーデンスは、事故現場を専門に撮影する写真家でした。
彼女と付き合ううち、スケッチの内容は死体の表情になっていくフランク。しかしある日、プルーデンスは姿を消してしまいます。
そんなフランクは、近親者が失踪した「サロン」に誘われます。やがてサロンに集まる人たちから、失踪した人たちの似顔絵を書くように頼まれるようになります。それがフランクの運命を変えてしまいます。

社会派SFのようでもあるし、寓話的でもあるのですが、現実と夢想との境目がとても曖昧で、結末も「結末」といえるのかどうか。
でも、こういう味わいは大好きです。

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