2014年7月1日火曜日

6月の読書

今年も半分が終わりました。月日の経つのは早いものです。
最近の世の中は、どうにも胡散臭いことが多すぎて、本を読むのも億劫になりがちです。天気も不安定ですしね。いろんなことが不安定なめぐり合わせになっているのかもしれませんね。

【青い眼がほしい】トニ・モリスン(大社淑子訳・早川書房)
ノーベル賞受賞作家トニ・モリスンの出世作、というか代表作ですね。黒人女性の過酷な運命。それを淡々と、しかし恐ろしく描いていますね。

【ハリスおばさんパリへ行く】ガリコ(亀山龍樹訳・講談社文庫)
【ハリスおばさんニューヨークへ行く】ガリコ(亀山龍樹訳・講談社文庫)
【ハリスおばさん国会へ行く】ガリコ(亀山龍樹訳・講談社文庫)
【ハリスおばさんモスクワへ行く】ガリコ(亀山龍樹・遠藤みえ子訳・講談社)
「ポール・ギャリコ」という名前のほうが馴染みがありますね。「ジェニィ」とか、懐かしいなあ。
ロンドンの通い女中のハリスおばさんの冒険。4冊のシリーズの中では、最初の「パリへ行く」がなんといっても面白い。「ニューヨークへ行く」は痛快だけれど、「国会」になると皮肉が効き過ぎかなという気がするし、「モスクワ」は、ウィットよりも冒険談そのものの方に重さがいき過ぎかなという気がする。

【スピンク日記】町田康(講談社文庫)
前に読んだのは猫の話でした。今回は犬。しかも視点が犬。写真で見る限り、かなり立派なプードル。いつもどおりの町田康。

【白いしるし】西加奈子(新潮文庫)
白い絵の具で描かれた富士山の絵に惹かれて、その作者に恋をしてしまう。しかしそれは成就しないことがわかっていたのだった。などという説明は、この物語の前ではなんとなく虚しく響くなあ。何しろ西加奈子ですから。読み始めはちょっと甘ったるい恋愛小説かなと思わせておいて、中盤でどかんという落とし所。そしていかにも西加奈子な終盤へ。この人はやっぱり、ひと味ちがう。

【愛の夢とか】川上未映子(講談社)
デビューの頃のエキセントリックな書きぶりはちょっとおとなしくなって、しかし作品の方向は相変わらず、読み手の思いをはぐらかし、挑発的で、安穏な考えを一蹴させてしまいます。久々にいいものを読んだ気分。

【寂寥郊野】吉目木晴彦(講談社)
芥川賞受賞作。農薬散布事業に失敗し、年金生活にも限界を感じたリチャードは再就職を試みる。妻の幸恵は、徐々に言動・行動がおかしくなってくる。その原因は散布事業の失敗のもととなった農薬散布に対する濡れ衣ではないかと思い始めるリチャード。
心の病を持ち始めた妻とその夫という構図に、異邦人としてコミュニティにどう溶けこむかという問題も絡め、短いけれど重厚な作品ですね。
もう一作の「うわさ」も、よくある団地問題ムラ的思考を告発する作品かと思ったら、ラストにはゾクッとさせられるし。なかなか。

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