2014年8月4日月曜日

【舞台】西加奈子(講談社)

結局、この土日は雨雨雨で、タイガースの試合もなく、のんびりとした2日間になりました。まさに雨読状態。

【舞台】西加奈子(講談社)

この題名で、舞台はニューヨーク、となると「舞台人を目指してマンハッタンへやってきた日本人」の話かなと思ったら、全然違っていました。

29歳・無職の葉太は、父の遺産でニューヨーク・マンハッタンへと一人旅。初めての海外旅行、一人旅で、やりたかったことは「セントラルパークで本を読む」こと。借りていたアパートメントからセントラルパークのシープメドウへ。念願かなって、さて芝生の上で読書、と本を開いたところで、持っていたカバンを盗まれてしまいます。カバンの中には、パスポート、財布、クレジットカード、帰りのチケット...すなわち「すべて」が入っていました。突然の出来事に、なすすべなく立ち尽くし、薄笑いを浮かべるしかない葉太。しかし、「ニューヨークに着いた途端にカバンを盗まれたマヌケなやつ」と思われるのはいや。そこから、サバイバルな生活が始まるのです。

他人の視線を気にするあまり、おかしな行動にハマってしまうマヌケなやつ、なんですが。読む進むうちに、人間誰しもそういうところがあるよなあ、ということに気付かされます。このブログにしたって誰かに読まれることを想像して書いているわけですし。そういうはっきりとした行動でなくても、ちょっとしたこと(道を歩くこと、電車にのること、椅子に座って伸びをすること)や、儀礼的なことも含めて、わたくしたちの周りは「誰かに見られている」ことの連続なのだなと思います。

「自分らしく、正直に生きろ」と、言うのは簡単ですが、なかなかそうは行きません。結局は誰しもがこの世の中という「舞台」で、「自分」を演じ続けているだけ、なのかもしれませんね。
というふうに書いてしまうと、ありきたりな小説のように思われるかもしれませんが、さすがに西加奈子は違いますよ。
主人公の葉太に「こいつ、阿呆ちゃうか」とツッコみつつ、「ああ、あるある」と納得させられてしまいます。

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