2014年8月2日土曜日

7月の読書

暑い日が続いていますね。と言っている間に、もう8月になってしまいました。あっという間ですね。

暑い日には外に出ず、読書あるいは音楽鑑賞あるいはテレビ。テレビも、気に入ったドラマや映画を録画しておいて、気に入った時間に(つまり涼しい状態で)見るのがよろしいですね。

この数日は本当に暑くて、家でじっとしていることが多かったので、読書も進みました。


【風】青山七恵(河出書房新社)

芥川賞作家の作品を久々に読みました。受賞作は、あまり印象にないのですが、確か村上龍と石原慎太郎が揃って会見したような記憶があります。
で、まあちょっと奇妙な味の家庭小説、といったところです。すみません、今回もあまり印象に残ってないので。


【バナナ剥きには最適の日々】円城塔(早川書房)

引き続き、芥川賞作家の新しい作品ですね。しょっとSFがかっていて、青山七恵よりさらに奇妙です。言葉遊び的なところもあるし。でも、ここまで行くとわたくしの趣味に入ってくるのですね。つまりは、よい読み手とはいえないのかもしれませんが。誰に迷惑をかけるわけでもないので、許してもらいましょう。


【穴】小山田浩子(新潮社)

はい、昨年の芥川賞受賞作ですね。
結婚して数年後、夫の元実家に引っ越すことになった夫婦。しかし、奥さんの周りには奇妙な出来事が次々に起こる。さらに、今まで知らされていなかった弟の存在まで。
大事件が起こるわけではないのですが、そこはかとなく、怖いです。


【猫語のノート】ポール・ギャリコ(灰島かり訳・筑摩書房)
【猫語の教科書】ポール・ギャリコ(灰島かり訳・筑摩書房)

猫好き作家、ギャリコの猫本2題。「ノート」は、最近よくある猫の写真にひとこと載せたようなものです。「教科書」は、「猫が、自分の手で(足で?)書いた、後輩たちへのメッセージ」という体裁の、実によくできた話です。最初の「どうやって人間の家を乗っ取るか」の章には、思わず笑ってしまいますね。


【余生返上】大谷晃一(ノア編集工房)

今年亡くなった、「大阪学」などの著書があり、テレビのコメンテーターとしても有名だった大谷さんの、たぶん、最後の本でしょう。
長年連れ添ってきた奥さんを亡くした空虚感。そこから立ち直って、またエッセイを書き始める話など、飾り気のない文章で綴られています。最後の「死亡記事」(自分の)が、なんとも。


【ひとつひとつ。少しずつ。】鈴木明子(KADOKAWA)
【蒼い炎】羽生結弦(扶桑社)
【空に向かって】安藤美姫(扶桑社)

フィギュアスケーターの著作を、まとめて読みました。著作、といっても、本人が書いただろうというのは鈴木明子のみで、あとの二人は青嶋ひろのがインタビューを再構成する、という形になっています。
となると、鈴木明子のものが選手の本音が出ているのか、といえば、そうでもないのですね。自分で書くとなると、どこか飾ってしまうところがあるのかなあ。いい言葉もあるんだけど、よく聞く人生訓だなあと思ってしまったり。当たり障りがないというか、「本人が書いた」という特殊性のようなものは薄いですね。
で、インタビュー中心の2冊は、逆に「ぽろり」と出てしまう本音があったり、あるいは聞き手である青嶋ひろのがその時感じた選手の思いのようなものが出ていて(というか、意識して書き起こしているのでしょうけど)、読み物としては面白いです。
ちなみに、鈴木明子のは最近の出版。羽生結弦は震災の年の、次の世界選手権を目指してようやくみんなの注目を集め始めだした時のもの。安藤美姫は、バンクーバー五輪の直前の心境。という風に時期がずれています。ということで、羽生、安藤の2冊は、「あの時、こんなことを思っていたのか!」という面白さもありますね。


【昭和の犬】姫野カオルコ(幻冬舎)

直木賞受賞作。姫野カオルコはわたくしと同世代です。だからここで言う「昭和」というのは、わたくしの感覚にぴったりマッチしてしまいます。それだけでもう半分以上気持ちのいいところに行ってしまいますね。
まだどこかに「戦後」が残っていた時代。この主人公のお父さんのような人は、確かにいましたね。ありそうもない話のようで、とてもリアリティがあります。そんな話が本当に「面白い」話なんでしょうね。姫野カオルコは、ちょっとこれからも気になりそうです。


【恋歌】朝井まかて(講談社)

姫野カオルコと同時に直木賞を受賞した作品。
明治初期。歌人である師匠が入院することになり、身の回りの整理を頼まれた弟子の花圃は、若き日の師匠の手記を見つける。その内容は。。。。
幕末の混乱期に、江戸の商家から水戸家に嫁いだ登世。慣れない武家での暮らしに戸惑うばかり。その上、夫は水戸藩の内乱に巻き込まれ、自身も悲惨な境遇に。
波瀾万丈の展開なんですけど、正直、こういう「武家もの」は苦手です。結局は武士とその家族の生き方、生き様を美化しているような気がしてしまうのです。
それから、わたくし、幕末から明治維新にかけての歴史には、とんと疎いのです。薩摩がどうした、長州がどうした、御三家は、皇女和宮は。。。。と続くと、頭が混乱してしまいます。こういう歴史物が好きな人にはこたえられないのかもしれませんし、この程度の歴史は知っていて当たり前なのかもしれませんが。
「知っていて当たり前」という感覚は、どこかライトノベルに近いものがあるような気もしますね。ということで、歴史物が廃れないわけは、ライトノベルが廃れないことと同じような理由なのかもしれません。いや、もちろんこじつけですけど。


【女のいない男たち】村上春樹(文藝春秋)

村上春樹の新刊ですね。いかにも春樹風の、中年の恋愛もの短篇集です。まえがきなどにだらだらと作品の作成経緯などを書くところも春樹流。
悪くはないんですけど、「さすが村上春樹!」とか「春樹でなくっちゃ!」と思わせるものには乏しいです。読者は贅沢なんです。


【漁港の肉子ちゃん】西加奈子(幻冬舎文庫)

最後に、7月の読書でのイチオシを紹介しましょう。
小学校高学年のキクりんこと喜久子の母親は、名前も同じ菊子(字が違う)だが、その風貌(不細工で太っている)から「肉子」と呼ばれている。そう呼ばれても、「肉子」はとても嬉しそう。そんなにブサイクなうえに、男にはホイホイとダマされる。借金を背負わされて必死で働かなければならないはめに、何度もなっている。それでも反省も公開もしない肉子ちゃん。多感な時期のキクりんには、そんな母親が時に疎ましくもあり、しかし心の底から大好きでもある。
流れ流れてたどり着いたとある漁港。そこにある焼肉屋で住み込みで(ということだろう)働くことになる。
海岸の三老人。変顔の二宮。フリフリ服のマリアちゃん。キクりんと肉子ちゃんを取り巻くいろんな人達の人間模様。
ありそうもないシチュエーションがあっても、なんでもかんでも笑い飛ばし、心のままにありのままに受け入れる肉子ちゃんの生き様に、きっと励まされることでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿