2015年10月20日火曜日

【宿屋めぐり】町田康(講談社)

野球シーズンが終わって(まだ終わってない人もいるけれど)、すっかりブログがご無沙汰になってしまいました。

来年のことをいろいろ考えつつ、ほくそ笑みつつ(^◎^;)、ぼちぼちと更新していきます。

又吉直樹氏が芥川賞を受賞した時、文学賞にあまり詳しくない人たちが、
「又吉はもともとエンターテイメントの人間なのだから、エンターテイメントを対象とした直木賞もとれるかもしれない」
しかし、かつて芥川賞と直木賞の両方を受賞した作家はいません。
それほど、この2つの賞には乖離があるのだと思います。

もし両方を取れる作家がいるとしたら、町田康はその第一候補でしょう。
彼はすでに「きれぎれ」で芥川賞を受賞しています。
そして今、彼の書いている作品の多くはエンターテイメント色の強いものです。
しかもどれもとても面白い。

「告白」はすごかったなあ。あれで直木賞を取れないのはおかしいと思うくらい。

で、「宿屋めぐり」です。

ある神社に刀を奉納するためにやってきた男が遭遇する、奇想天外な物語。
うっかりと誰かに間違われて坊主にいちゃもんをつけられ、ついその坊主を斬り殺してしまう。
で、逃亡の日々となるわけだが、そのうち自分が何のためにこんな行動をとっているのかもわからなくなってくる、という話です。

というあらすじでは、なんのことがわかりませんね。
実際、まじめに読んでいると「???」の連続になるでしょう。
最初は時代小説かと思って読み始めると、いきなり現代の物語になるし。
さらには自分にその使命を託した「主」が一体誰なのか、というのさえ曖昧模糊としたものになっていきます。

まあなんと、これほどまでのひどい話を書けたものです。
時代小説でもないし推理ものでもないし、ホラーでもないし。
なにものでもなく、何もかも含んでいるような小説。

「宿屋めぐり」という題名からは、どこかの宿場での物語、すなわち時代小説のようなものを想像していたのですが、
「人生の生きる道、人のいるところが宿であり、人はだれもがその宿を巡り歩いているのだ」
という、訳の分かったような分からないようなことらしいです。

しかし、この人の人を喰ったような饒舌ぶりには、ほとほと参ってしまいます。
とにかく破天荒。そして面白い。
こんな小説を書ける人は、他にいないでしょう。
さっさといろんな賞を差し上げてください。

0 件のコメント:

コメントを投稿