2016年2月18日木曜日

【ヌエのいた家】小谷野敦(文藝春秋)

前に小谷野敦を読んだのがいつだったか、思い出せない。どんな作品だったかも。
タイトルの「ヌエ」とは、語り手(作家の「敦」)の父親のこと。母親が死に、その6年後に父親も亡くなる。母が病に倒れた時に「しんじまえ」と罵った父親。それを許すこともできない息子。やがて父親も痴呆が始まる。もともと暴言と自分勝手な行動ばかりだった父親なので、どこからが痴呆の症状なのかがわからない。いっそ死んでしまえと思う敦。
わたくし自身も2年前に同じような状況で(これほど暴君ではなかったが)父親のち方を見てきたので、ところどころで身につまされる話も。
しかしこれは「小説」なので、どこまでも感情移入できるかというとそうでもない。
そこのところは作者もわかっていると思う。思いたい。
誤嚥性肺炎。胃ろうなど、懐かしい言葉(不謹慎だけど)。どこでも同じような悩み(不理解とか勝手な都合とか)があるものなのだ。
父親の死、となると、軋轢とか和解とか、そういったものが小説の典型なのだが、これはそのどれとも違う。そしてどれよりも現実に近い。ここまで赤裸々にあからさまに書かれると、ちょっと引いてしまうなあ。その点で新しさはあるけれど。

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