2016年2月27日土曜日

【ひとりの体で】ジョン・アーヴィング(小竹由美子訳・新潮社)

自分に正直に生きようとすることが、世間と「闘う」ことになるというのは悲劇としか言いようがない。
「ひとりの体で」の主人公ビルは、小さな町で生まれ、寄宿学校に通い、そして自分自身に目覚める。
それはとても自然なことだった。
性的マイノリティを認めない人々。それが普通だった時代を通りぬけ、現在(2010年。ビルは70代になろうとしている)までの物語。
なんとも、読み応えのある大河小説。しかしそこはアーヴィング。一つ一つのエピソードがとても面白く、上下巻各300ページ超え(日本語で)の物語は飽きることなく読み進められる。
まるで連続ドラマのひとつひとつを見ているかのよう。
60年代の偏見と差別。80年代のエイズ禍を経て、それでもなお偏見は残る。
それに声高く抗うのではなく、しかし力強く自分を主張する。
彼を取り巻く多くの人々。彼に共感する人、反発する人。謎解きの面白さも含みつつ、感動を味わえる。
共感を持って読みたい本。

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