2014年2月1日土曜日

アバドのモーツァルト:レクイエム(2012年 ルツェルン音楽祭)

今年、合唱団でモーツァルトのレクイエム(いわゆるモツレク)を演奏するのです。本番はまだまだ先なんだけど。今、練習の真っ最中。
よく知られていることですが、この曲はモーツァルの遺作で、しかも未完成。「涙の日」の途中まで書いたところで力尽きたと言われています。そして未完の部分は弟子のジェスマイヤーが書き足して演奏したのですね。「ジェスマイヤー版」と呼ばれています。
で、この弟子の書いた部分を書きなおして演奏する、ということが時々あります。今度演奏しようとしているのは、ピアニストで音楽研究家のレビンさんという人が改訂した「レビン版」という版です。これ、新しいということもあってなかなか珍しい。そしてなかなか難しいです。
そのほかにもいろんな人の改訂によるいろんな版が存在するのですね。

で、練習している曲だからということもあって、目についた(耳についた?)ものは一応聞いてみようと思っていました。
そして今日。何気なく撮りためたビデオをちょっとかけてみたら、これがレクイエムだったわけです。それもアバドが指揮したもの。そしてジェスマイヤー版じゃなくてバイヤー版での演奏で(どう違うかはWikiで確かめてみてください。わたくしもよく分かりませんのです)、「サンクトゥス(Sanctus)」だけはレビン版という、変則的な演奏でした。
一部分だけでもレビン版が聞けるやん。それもアバドでっせ。

というわけで聞いてみましたが。これがとても素晴らしい演奏でした。
アバドは先日亡くなってしまいましたが、この時はずいぶん痩せてはいるものの、指揮台上での姿はシャキッとしていてカッコ良かったです。ダイナミックスとかリズムとかのメリハリが聞いていて、聴き応えのある演奏でした。
それと、歌がとてもうまかった。合唱はバイエルン合唱団とスウェーデン放送合唱団。コントロールがよくきいていて、しかも無理がない。細かい動きも明確。こういう風に歌えたらいいなと思いましたね。
そしてソリストの皆さん。こういう合唱曲のソリストは(特にオーケストラ伴奏となると)全体のバランスとかハモリとかは横においておいて、とにかく自分の力量を出そうとする演奏者が多いのですが(まあ普段はオペラとかで、目立つ役目を担っているということもあるんでしょうけど)、今回のソリストの皆さんは、一人ひとりがしっかりしていながらも、4人のバランスがとてもいい。ソリストだけでこんなにハモるモーツァルトは(もっと大げさに言えばオーケストラ伴奏の曲は)あんまり聞けないですね。特にアルトのサラ・ミルガンドという人。テナーが歌っているのかと思うくらい声の幅がすごい(だからテナーとよくハモる)。内声(アルトとテナー)がハモるとこんなに気持ちのいい音楽になるのかと思いました。

ルツェルン音楽祭の伝統のようなものかもしれませんが、演奏が終わったあと、しばらくは拍手もブラボーの声もたてないのですね。指揮者がゆっくりと指揮棒を降ろし、ふうーと息を吐いて、吸って、その空気がふわっとどこかに溶けていってから、ようやくパラパラと拍手が始まって、やがて大きな歓声になっていくのですね。いい演奏を聞きました。こういう風に歌えたらいいんですけど、ね。

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