2015年3月31日火曜日

【王国】中村文則(河出書房新社)

「掏摸(スリ)」の兄弟編、ということなんですけど、「掏摸」がどんな話だったか、思い出せないのです。掏摸の高い技術を持った男が巻き込まれる(何に? が思い出せない)話だったと思うのですが。
だとすれば、同じような展開。娼婦を装って男の弱みをつかむ仕事をする女。その過去も絡んで、さらには何者か(それは大きな組織か?)に利用され、逃れようがなくなっていく恐怖、サスペンス。
クールな展開なんだけど、何故か冷たくはない。そして恐ろしい。よく分からない「何者か」に振り回される恐ろしさ。
ちょっと間違えれば陳腐な犯罪フィクションともなるようなものが、どこかにリアリティもあって、怖さも面白さも高レベル。謎も深まる中で物語が終りを迎え、しかしわずかな希望も見せてくれる。
この面白さは、他では味わえないかも。それくらい密度が濃いです。比較的短い小説なんだけど、中身の濃さは一級品です。

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