2015年1月10日土曜日

【地球を抱いて眠る】駒沢敏器(小学館文庫)

90年代なかばに著者が体験した7つの旅物語。ここでいう「旅」とは、いわゆる「心の旅」と読み替えてもいいかもしれません。

東京での「退行催眠」体験。
屋久島で500個の風鈴を吊るして自然の音を感じる体験。
サンフランシスコの白人だけの禅寺。
長野での大地のヒーリング。
バリ島の呪術師。
ハワイの「石」にまつわる言い伝え。
オーストラリアのヒッピーコミューン。

やや胡散臭い内容も含まれます。内容は胡散臭いのですが、著者の語り口はその胡散臭さも認めた上で、謙虚であるし、視点は平等であろうと務めています。といって、ただ事実をありのままに伝えるだけではなく、結構はっきりと自己主張もあります。ヒーリングといっても、何も感じなければ「何も感じない」とはっきり書いていて、それがかえって文章に信頼をもたせることになっていると思います。オーストラリアの話などは特に。著者のがっかり感がよく伝わります。

面白かったのはハワイの石伝説。命あるものが死んだ状態(貝殻など)は恐ろしくない。もともと命を持たない「石」は、恐ろしいという考え方。
そして運命をその「石」に託すというか、「石」のせいにする人間の心理。著者もそのひとりになった(?)ところ、ドキュメンタリーを超えた小説のようなものになっています。

0 件のコメント:

コメントを投稿