2015年1月8日木曜日

【変身のためのオピウム】多和田葉子(講談社)

これはどうも、なんと言っていいのやら。
えっと、概要をお話するのも難しい。
22章に分かれて、22のギリシャ神話に基づく女神の名前を冠した女性たちの物語が続く連作短篇集。なのですが。

内容は、と改めて訊かれると困る。
はっきり言って、これといった筋はありません。
それどころか、語り手の「わたし」が一体誰なのか、私には最後までよく分かりませんでした。

しかし。
それぞれ短い話なのですが、その中にある言葉の数々は、なんとそれぞれが輝いていることか。
といって、「詩」ではなく、あくまでも「物語」であるところが変わっているなと思います。

ああ、つまりは、これは「多和田語」を楽しむ本、といえるかもしれません。
こういう本は、他にはあまりないかもしれません。
ああ、シュールレアリストは、こういうのを書くのかも。

2 件のコメント:

  1. 良い本ですよね。何度も読み返したくなります。

    「わたし」はオピウム自体(自身?)ではないかと思うのですが、どうでしょうか。あと、一見つかみどころがないようにみえて、実はけっこう具体的な筋がある本だとも思いますが、どうでしょう。例えば、「家族」ははっきり批判されていますし、ときどきやってくる銀行員も気になります。

    「なぜ、「わたしの妻」という題名にしないのか。ギリシア神話から名前を拝借するなんて、つまらない言い訳だわ。」(176ページ)というくだりもあります。女神の名前は比喩ではなくて、直接なにかを名指ししているのではないかと思ってしまいます。何を名指ししているのかはわかりませんが...

    所感まで。

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    1. k. さん
      コメントありがとうございます。

      そうか、注意深く読めば、いろんな「キー」があるのですね。まだまだ読みが浅いのかなぁ。
      わたくしはただ、言葉の流れを楽しんでいました。だから詩のように感じてしまったのでしょうね。

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