2017年1月17日火曜日

【四人の交差点】トンミ・キンヌネン(古市真由美訳・新潮社)

フィンランド北部の町を舞台にした、四人の物語。
19世紀の終わりに、助産師として町にやってきたマリア。まだお産による母子死亡が多かった時代。そして「助産師」に対する偏見。さらには助成に対する偏見。その上マリアは、未婚の母となる。
ひとり娘のラハヤは、写真技師となる。母と同様、未婚のまま第1子を出産。周囲の好奇と批判の目をはねつけつつ生きていく。その前に現れた、偏見とは無縁のような男オンニと結ばれ、やがて出産。しかし生まれた子ハンナは、生まれつき目が不自由であった。
その後生まれたヨハンネスは、カーリナという娘と結婚し、一人暮らしとなったラハヤと同居する。頑固な(特に「家」に関して)ラハヤと衝突を繰り返すカーリナ。しかし、ラハヤとのどこか通じるものがある。

と、ここまでで「マリア」「ラハヤ」「カーリナ」を中心とした物語が語られた後、最後の1章が「オンニ」の物語となる。ここで、それぞれの人生の時系列が再び組み直され、隠されていた秘密が明らかとなる。

フィンランドというと、雪とムーミンぐらいしか思い浮かばないが、実は複雑な歴史を持っているのだ(第2次大戦で、はじめはドイツとともに戦うが、ソ連に占領されてからは、同じ軍隊がこんどはドイツを相手に戦うことになる)。さらに(半分ネタバレになるけれど)、ごく最近まで、同性愛は刑事罰の対象となっていたらしい。

様々な偏見と戦う、あるいは逃げる、どんな選択もその人の選択なのだろう。しかし、今の目で見ると、実に悲しいことである。

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