2017年1月4日水曜日

芥川賞候補作

次回の芥川賞の候補作品を読んでみました。
自分なりの感想です。(読んだ順に紹介)

【ビニール傘】岸政彦(新潮2016年9月号)

いきなりの大阪弁。舞台は大阪。それも西九条とか新地とかですか。
飯場で働く男と、就職で都会に出てきたけれど、初め美容師→新地のガールズバーになってしまい、引きこもりになってしまう女。で、女は故郷和歌山の村へと帰る。
話し手がコロコロ変わって最初は戸惑ったけど、だんだんその面白さに入っていけますね。
でも、後半がなあ。どっかで聞いたような話に落ち着いてしまってるような。という残念さ。

【しんせかい】山下澄人(新潮2016年7月号)

自給自足をしながら脚本と演技を学ぶ、というのに応募したら合格。集団生活の二期生となった主人公。その生活。
期せずして、再び大阪弁。しかし舞台は(おそらく)北海道。馬も出てくるしね。
で、文体というか(括弧書き省略みたいな)は、目新しいんだけど、物語としてはどうなんでしょう。

【カブールの園】宮内悠介(文學界2016年10月号)

日系三世のレイは、IT関係の仕事をしているらしい。幼い頃から太っているのを気にしている、らしい。それでいじめにもあっていた。と自分では思っていたが、どうやらそれは「人種問題」であったらしい、ということに今更気づく。では自分の根っこはどこにある? ということで元収容所にやってくる。
なんて、なんかありがちなんですけど。自覚なく、というところが新しいのかな。

【キャピタル】加藤秀行(文學界2016年12月号)

大阪、北海道、アメリカ、と来て、次はタイです。コンサルティングファームで7年勤め上げたおかげで得られた1年の休暇。バンコクのアパートで安穏とした日々を過ごす須賀に、元先輩から頼まれごと。先輩が採用した有望な女子コンサルティングが、事故を起こした上に入社を断った。その理由を調べてほしい。暇をかこっていた須賀はその才媛アリサに会いに行く。
謎解きの面白さもあって、これはなかなか、と思いましたが。謎は謎のままで置いておいた方がよろしい場合もあるのですなあ。現代の企業小説と読めなくもないけれど、それだったらこの分量は短かすぎ。

【縫わんばならん】古川真人(新潮2016年11月号)

日本に戻ってきました。九州ですね。方言だらけ。敬子婆さん(あえて婆さん)の独白っぽいところからはじまって、次の章ではその妹の多津子ばあさんの話。そして最終章では二人のお母さんのお葬式。それぞれの場面で、いろんなひとの想念が入り混じり、時空を超えて話が進み、気がつけば元の場所。最後の葬式の場面は「ダロウェイ夫人」ぽい、と思うのはどうやら私だけのようです。
でもおもしろい。
これ、受賞するかな。。。。(予想)


東大阪市の図書館は、今年から年末年始も休まず開館。すなわち大晦日も元日も開館していました。何という行き届いたサービス。(元日から図書館行きました)
でもね、正月三が日ぐらいは休んでもかまわないと思いますよ。
人もいなかったし。

それよりも嬉しいのは、上記5冊の文芸誌を貸し出してくれたこと。
図書館によっては、雑誌の貸出は原則していません、というところが多いのですね。
大阪市もそう。大阪府もそう。
でも、雑誌だって、家でゆっくり時間をかけて読みたいもの。とくにこういう文芸誌はね。
その点は、ありがたいです。ありがたいありがたい。
今年もよろしくお願いします。

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