2014年1月7日火曜日

【死の家の記録】ドストエフスキー(望月哲男訳・光文社古典新訳文庫)

ドストエフスキーがシベリアで囚人生活(?)をしていた時のことを元に書き上げた小説ですね。後の作品の原点とも言われています。
シベリアでの獄中生活。それは想像するような過酷なものでもなかったようです。もっとも、小説ですから、どこまでが事実なのかはわかりませんが。
ゴリャンチコフというのが主人公で、この人の手記、という形で物語が進みます。どんな罪でここに繋がれたのか、ということについてはあまり語られません。というか、ほとんど筋らしい筋もなく、獄中での出来事がただ淡々と述べられているといったようなものです。そしてその中で、この書き手の考えがあれこれとはさまるのですね。まあ長いモノローグを読んでいるようなものでしょうか。
かつては貴族であった主人公が、囚人となって身分の差もなくなり獄中生活を送る、ということで、人間の平等性などに思いを馳せるのですね。ところが終盤になって、囚人が集団で管理者に訴える場面になると、なぜか他の囚人からはよそ者扱いされるのですね。どこまでもついてくる身分差を突然味合わされるわけです。そのための前段が、長い長い長い長い獄中生活の物語なのですね。
ドストエフスキーは今までも何冊か読んだことがあります。この小説がその後の作品の土台になったのだなというのはなんとなく分かりますね。物事を突き詰めて書く書き方。事細かな描写力。その後の作品に生かされていますね。
光文社古典新訳文庫では、巻末に「読書ガイド」がついています。これを先に読むことをおすすめします。作中に出てくるいろんなことがら(笞刑とかスラングとか)が分かって、読みやすくなりますよ。

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