2014年1月12日日曜日

【笛吹川】深沢七郎(講談社文芸文庫)

甲府に流れる笛吹川の土手の小屋似住む一家、六代の物語。お屋形様(武田家)との関わりの中で様々な苦労や悲惨な出来事が起こるのですね。
淡々とした語り口調で、貧しいものたちのギリギリの生活をいきいきと描き、読み手の安易な感受性をきりきりまいさせるところは、「楢山節考」にも通じます。いろんなシーンで「あ、深沢七郎だ」と感じさせるものがありますね。
とりつくろった表現とかきれいな文章を書こうとかいう気持ちはないみたいに思えます。ありのままの出来事をありのままに描いて、これでどこが悪い!と開き直っているような。その潔さ。
戦国時代ですから、戦に行くのが男の役目。しかし結果は悲惨なことになります。いわばお屋形様に家中が振り回されて死んでいくわけなのですが、それでも「今あるのはお屋形様のおかげ」と信じているのですね。どこか、戦争中の日本を象徴しているのかな、という深読みをしたくなります。
登場人物たちの生き方は、どうにも理屈に合わなかったり、間違っているように思えるんだけど、こちらが分からは文句を言えない凄みのようなものを感じます。これが深沢作品の真骨頂なのでしょうね。
潔く正面切って生きろ、と言われてるみたいです。ちょっと、ご勘弁をと言いたくなる時もありますが。

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