2014年1月19日日曜日

【さようなら、オレンジ】岩城けい(筑摩書房)

今年の芥川賞の候補作。惜しくも受賞は逃しましたけどね。去年の太宰治賞を受賞した作品です。
オーストラリア(だと思われる)に移住してきた二人の女性の話です。ひとりは戦火を逃れてやってきたアフリカからの難民サリマ。もうひとりは夫の転勤についてきた日本人(と思われる)で一児の母。サリマはこの女性を「ハリネズミ」と呼んでいます。
二人の出会いは英語教室。生徒のレベル分けがなく、発音もおぼつかないサリマは語学に堪能なハリネズミを羨ましく思っています。しかし時が経つと二人の関係は微妙に変化していくのですね。それぞれの人生の出来事が色々からんできます。
言葉が通じない=思いが通じない。異国で暮らす孤独。しかし生活はしていかなければならない。生きていかなければならない。言葉だけでなく文化も違う場所で。しかも女性で。ふたりはいろんな壁を乗り越えていかなければならないのですね。
物語は、二人の視点で交互に語られていて、それぞれが希望や悩みを抱きつつ生きているのをよく表しています。人種差別や偏見だけでなく、人生に待ち受けるいろんな障害。それらの壁を超えて生きていこうとする姿がいいですね。ちょっと出来すぎのような感じもしますけど。応援したくなる本でした。

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