2014年1月14日火曜日

【恋文の技術】森見登美彦(ポプラ社)

全編書簡形式で書かれた小説です。相変わらず京都を舞台に、と言いたいところですが、今回は京都から能登半島の研究所に派遣されてしまった守田一郎が主人公。というか、語り手です。というか、手紙の書き手です。
大学時代の同僚小松崎くんには恋の手ほどき(と本人は思っている)を。全く歯がたたない先輩の大塚緋紗子さんには宣戦布告を(もちろん失敗する)。家庭教師として教えていた間宮少年には言い訳三昧を。更に妹に、そして森見登美彦に(!)。手紙を書きまくる(と言っていいでしょう)のですね。そしてそれぞれの手紙の内容が絡まって、ひとつの物語になっていくという趣向です。
森見ワールド全開ですね。抱腹絶倒。はっきりいって情けないキャラの守田くんは、研究所の上司谷口さんにいじめられつつ、「恋文指南」を目指してこれらの人たちと文通を続けるのですね。しかし本当の目的は、もちろん自分の恋文を書くことなのであります。そしてその恋文は書けたのか。恋は成就するのか。
阿呆なことを繰り返し、阿呆な文章を繰り返して笑わせておいて、最後にぐっとくる作品です。最後にグッと来るのは、読者(わたくし?)も阿呆なことの証明なのかもしれません。阿呆もいいものです。

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