2014年1月11日土曜日

【犬は勘定に入れません】コニー・ウィリス(大森望訳・早川書房)

「-あるいは、消えたヴィクトリア調花瓶の謎-」という副題がついておりまして、数々の賞を受けたコニー・ウィリスのSF作品です。
1940年の空襲で焼け落ちたコベントリー聖堂にあったはずの「主教の鳥株」(どうやら花瓶のようなものらしいです)を探すために、2057年からタイムトラベルを繰り返す研究員のネッド。しかし度重なるタイムトラベルによる「タイムラグ」(時空差ボケ?)にかかり、静養のためにヴィクトリア時代にタイム・トリップするのですが、実はそこでもある使命が待っていたのでした。しかしタイムラグにかかっているネッドはいまいち事情が分からずじまい。同じようにタイム・トリップしてきた研究員のヴェリティと、時空の「齟齬」を直す手立てを尽くすことになるのですが。
おかしな題名は「ボートの三人男」へのリスペクト。作者のジェロームもちらっと出てきます。
全体がユーモア満点のSF小説なのですが、主な舞台は古き好きイギリス。当時の貴族社会のドタバタを描いていて、なんとも面白いものになっています。気の強い女主人、金魚にうつつを抜かすその夫、甘やかされ放題のその娘。そして何よりもその家の執事! SFでありながら古典的なユーモア小説でもあるという面白さ。
できれば前述の「ボートの三人男」と、ウッドハウスの「ジーヴスもの」のどれかを先に読んでおくことをおすすめします。その両方と、SF時空サスペンスを併せ持った、素晴らしい作品です。数々の受賞も頷けますね。

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