2014年1月16日木曜日

【アンデスマ氏の午後・辻公園】マルグリット・デュラス(三輪英彦訳・白水社)

「愛人(ラ・マン)」で有名な(本人は不本意かもしれませんが)デュラスの、初期の頃の作品です。デュラスを読むのはこれが初めてかもしれません。
感想は...何とも不思議な感じです。
「アンデスマ氏の午後」は、海と街が見える丘にある別荘で、仲買人が来るのを待っている老いたアンデスマ氏の一日。
「辻公園」は、旅商人の男と家事手伝いの女とが公園で話し合う。
どちらも、筋らしい筋はありません。ただ状況が描写されるだけ。「アンデスマ氏の午後」では、籐椅子に座って仲買人を待つアンデスマ氏(かなりの年配で、若い娘がいて、この別荘も娘に頼まれて買ったもの、ということが少しずつ分かる)と、仲買人の娘、仲買人の妻との会話があるだけ。しかもその会話がどうにも成り立っていなさそう。
「辻公園」に至っては、物語のほぼすべてが二人の会話のみ。人生の諦観を感じさせる中年(らしい)の旅商人と、未来への希望を持ち続けようとする(しかし思ったとおりにいかないので苛立っている)若い女使用人。それぞれが象徴的なものなのかなと思うけれど、話はあまり噛み合っていなくて、こちらも何が言いたいのやら、という気もします。
どちらも短い話で(これでだらだらと長かったら耐えられないかも)、物語はこれからどうなるのだろう、というところでハタと終わってしまうのですね。まるで「続きはどうぞ皆さんでお考えください」と言われているようです。だから読後感が不思議な感じで、しばらく心に残るのでしょうね。
ちなみにこれは白水社の「新しい文学」シリーズの一冊です。といっても1960年代の出版ですから、「新しい」というのもその時代の、ということになりますけどね。でも「なにか新しいものをつくりあげよう」という意気込みは感じられます。それもこういう作品を読む楽しみですね。

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