2017年4月3日月曜日

【黒と茶の幻想】恩田陸(講談社文庫)

大学の同窓生で30代後半の男女四人が、屋久島(Y島)への旅を通じて、過去の謎すなわち、四人の間にあるわだかまりを解いていく。

四人それぞれの語りで作られる4つの章。それぞれの視点が少しずつ違っていて、それぞれの章で一つの物語が完結していく一方、複合的に謎が明らかとなっていく、その構造の素晴らしさ。作者の構成力の確かさが遺憾なく発揮されている。

どこか感の鋭い利枝子、元美少年の彰彦、利己的だが魅力的な蒔生、一見天真爛漫な節子。蒔生と利枝子は学生時代はカップルだったのだが、利枝子の親友・憂理に蒔生が惹かれたことにより、別れていた。一方、蒔生は彰彦の姉とも関係を持っていた。

四人が持っている、過去の謎を解く、その過程がとても面白い。各々には、他人には言えない事情があり、しかし年を経て、別々の家庭を持った今となっては、隠しておくことも苦しいこともあり。。。。ということで、いろんな謎が解かれていくのである。

さらにさらに。ここは恩田陸の真骨頂だと思うけれど、四人が「謎解きゲーム」のように話し出すいろんな「謎」の面白いこと。そしてそれを解いていくのも組み込まれていて、一つの話に一体どれだけのミステリーを放り込んだら気が済むんだっ! と言いたくなる。

その上その上。本人作の「麦の海に沈む果実」のストーリーまで組み込まれてしまって。
いやはや、「集大成」と言うにはあまりにも内容豊富。深刻なものからユーモアまで、これだけのことを一つの作品に押し込めてしまうとは。

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