2015年7月20日月曜日

【パノララ】柴崎友香(講談社)

雨が降り止んだらこんどは猛烈な日差し。台風一過というけれど、そういう爽やかさより「暑い」「蒸し暑い」というしんどさのほうが先に立ちます。連休でよかった。洗濯にはぴったりやし。休みでないとできない布団干しも、この天気なら短時間でばっちりです。

柴崎友香の長編です。
更新料が払えなくてどうしようかと迷っている主人公真紀子に、イチローから「家に空き部屋があるから貸すよ」ということで転がり込むことに。この木村家、イチローの父・将晴は全裸で洗車しているわ、思いついたら家を改築するわ。姉の文は、一人こもって創作活動。妹の絵波は周りのことにはむとんちゃく。そしてこの3人の母親みすずさんは女優なのだが、3人ともどうやら父親が違うらしい。

改築に改築を重ねた木村家は、本館と別館がどこでどうつながっているのだか。
そのうちイチローの不思議な体験、文さんの「特技」、突如失踪するみすずさんなど、物語はあちらこちらにはじけていきます。
その後、主人公の真紀子のこれまでの生き方も明らかになってきて、この家族との落差と価値観の違いがとても面白いことになってくるのですね。

ただ、いろんなことが起こりすぎて(これだけのキャラの強い登場人物が揃うと、それはそれは大変でしょう。もちろん書ききれないほどの登場人物あり)、ちょっと超常的な部分もあって、一つ一つのエピソード、ひとりひとりの人物像は面白いんだけど、ハチャメチャな後味というふうにもなってしまいました。ちょっと残念。

後半、真紀子は妹・絵波とともに映画作りに関わるわけですが。映画のように「同じシーンを何度も繰り返す」うちに、記憶も曖昧になり、実際に起ったこと、起こってほしかったこと、起こらなかったけれどきっとこうだったはずというものが、記憶として新たに形作られるのかなとも思いました。

そして、そういうことは本当は「問題じゃない」のかもしれません。
作中に何度か出てくるこの言葉は、ちょっと救いになりますね。
型にはまった生き方しか考えようとしない真紀子の両親(その両親の間にも問題あり)と、全く型にはまらない木村家の人びと。
どちらが正しい、ということもないのでしょう。そんなことは問題じゃないのでしょうね。

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