2015年9月10日木曜日

【灯台守の話】ジャネット・ウィンターソン(岸本佐和子訳・白水社)

訳者のあとがきを読むと、どうやらジャネットはこの作品を書く前は、いろんな問題があったらしいですね。
確かに、一般に受け入れられやすい作家とは言い難いかもしれませんが。
それでも、言葉の力、物語の力を信じて書き続けた、という迫力のようなものがこの作品にはあります。

海辺の崖の家で生まれたシルバー。母親と二人暮らし。父親は、どこかの船乗り。名前も顔もわからない。
ある日母親は崖から転落(だと思う)。孤児になり都会で引き取られるが、養母は自分勝手でエキセントリック。逃げ出すように辿り着いた先は灯台守の家つまりは灯台。そこで一緒に暮らすことになったピューから、様々な物語を聞くことになる。

というあらすじのようなものを書いてみたけれど。いつものごとく物語の時間軸はあっちへ行きこっちへ行きするし、場面もあっちへ行き、こっちへ行きする。
だから、ひとつの物語に固執することも出来ないのですね。
それが気持ち悪いという人もいるでしょうが、じゃネットにとっては「それがどうしたの」ということなのでしょう。

物語には始まりもなく終わりもない。それは人生のように。あったこともあるしなかったこともある。これから起こることもあるし起こらないこともある。
その複雑さがたまらないですね。
わたくしは、好きです。こういう人。

0 件のコメント:

コメントを投稿