2016年6月19日日曜日

【純喫茶】姫野カオルコ(PHP文芸文庫)

直木賞を受賞した「昭和の犬」にもつながる、昭和の香り漂う短編集。と思ったら、どうやら書かれたのはこちらのほうが先らしい。
そして、「昭和の薫り」というのはちょっと語弊があるかも。
その時代を懐かしむ、ということではなく、自分が子供の頃の「記憶」の謎の部分、どうしても忘れられないことがら。それはどうして忘れられないのか、を含めて、「記憶」の奥にある情景を、謎解きの要素も含みながら物語は進みます。

記憶。この曖昧なもの。
あとがきで作者が語っていますが、
「カメラで取ったように焼き付けた記憶」
には、自分では説明ができない要素がたくさんある。
それはよく分かる気がします。あの時の情景。目に浮かぶけれどどこかわからない。その時の手触り、匂い、そのほかそのほかは、なんとなく「記憶」されているのだけれど、説明がつかない。
それらを「説明付けるもの」を見つけたときの衝撃のようなもの。
どこか切なさも感じるのは、同世代だからかなあ。

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