2015年4月13日月曜日

【半分のぼった黄色い太陽】チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(くぼたのぞみ訳・河出書房新社)

西加奈子氏ご推薦。著者はナイジェリア出身の、西氏と同世代の女性。
舞台は60年代のナイジェリア。イギリス統治からの独立を勝ち取ったはいいが、民族対立は根深く残る。そして起こる悲劇。北部に住むイボ族の虐殺。南部に逃れて難民となった人々。南部に集まったイボ族は「ビアフラ」の独立を宣言するが、そこにある油田を手放したくない北部ナイジェリアはビアフラへの容赦ない攻撃を加える。物資も兵力もないビアフラは、貧困と飢餓と疫病にさいなまれることに。

「ビアフラ」という言葉は知っていました。子供の頃よく聞きました。栄養失調で死んでいく子どもたち(多分大人たちも)の写真もよく見ました。
でも、実際にどんなことが起こっていたのか、今までよく知りませんでした。
そして世界が目を背けていたことも。なんという悲劇。

とても悲しい怖い物語なんですけど、作者の筆致は恐ろしさを超えて「面白さ」が際立っています。もちろんフィクションの部分が多いんでしょうけど、それにしても「面白い」。面白い、というのは単に「愉快」というものとは違います。読み物としてはらはらどきどきがあり、読んでいるとその世界に入り込んでいくことができる。まるで映画を見ているかのような面白さなのです。
おそらく、戦争を題材にしながらも、視点がいつも、そこに生きる人たち一人ひとりに向いているからでしょう。その時何が起こったか、ということと同時に、そのとき人々はどうしたか、何を考えたか、ということが細かく描写されていて、そこがとても面白い。

そして、いつも戦争のもとは、他者への不寛容があるのだろうなあということを思うのでした。今もそうだし。
色々考えさせられる話でした。多くの人に読んでほしい。長いけど。

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