2015年5月3日日曜日

【夕子ちゃんの近道】長嶋有(講談社文庫)【ぼくは落ち着きがない】長嶋有(講談社文庫)

長嶋有の魅力はなんでしょう。
日常のなんでもないことをなんでもないように綴る、というスタイルなんですね。
でも「なんでもないこと」の中には「そんなことがあるの?」ということが結構多かったりするのですね。でもそれを大げさに脚色することがない。うっかりすると読み飛ばしてしまうこともあったり。

骨董品店の2階に間借りする主人公の生活を綴る「夕子ちゃんの近道」は、珍しく「事件」めいたことが多く起こります。登場人物もバラエティに富んでいるし(全部は言いつくせませんが)、主人公もやや饒舌。
それでも、ただ「箱」を作るだけの朝子さんなどのキャラは、

何かをしているけれど何のためにしているのかもわからないし何故しているのかも(本人も)わからない

というのが出ていて、ああこれがこの作者の色なのかなと思います。

「ぼくは落ち着きがない」は、もっと何も起こりません。
高校の図書部。部室にたむろする学生たちの日常。「ああ、あったあった」というエピソードの数々。それは実にとるに足らないことなのですね。
ちょっとだけ、教師との諍いのような出来事も起こるのだけれど、それはほんの瑣末なことで、やはりこの小説の読みどころは「何も起こらない」ことのような気がします。
それでいて心に残る。なにがそう思わせるのでしょう。

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