2015年8月10日月曜日

【タングルレック】ジャネット・ウィンターソン(瓜生知寿子訳・小学館)

イギリスの片田舎。古い古い屋敷タングルレック邸に住むシルバーは、ある日両親と姉がロンドンに行ったきり行方不明となってしまい、「おばさん」と称するミセス・ロカバイと同居することに。
そこに度々訪れるダークウォーターなる不思議な人物。彼は「タイムキーパー」を探しているといい、それはこの家のどこかにあるはず、それをシルバーは知っているはず、と主張する。
タイムキーパーを持つものは「時間」を支配することができる。
同じようにタイムキーパーを狙うリーガリア・メイスンなる女性実業家も現れ、シルバーは逃げ出すが、そこで知り合ったのは見たこともないような人々だった。

ジャネット・ウィンターソンの、これは児童文学の部類に入ると思うのですが。
子供が読んでも分かるのかなあ。
「アインシュタイン・ライン」とか「量子コンピュータ」とか、はてはシュレディンガーの猫までが登場するのです。
時間の壁を超え、宇宙を超えて、シルバーの冒険は続いていくのですね。

先に読んだ「さくらんぼの性は」に通ずる、これは時空を超えた物語。
わたしたちが今過ごしているこの時間は、本当に「今」しかないのか。
ひょっとしたら「ありえたかもしれない未来」もあるのかも。

「時間」をテーマにしたファンタジーといえば、ミヒャエル・エンデの「モモ」もすぐに思い浮かべてしまいます。あれは「時間泥棒」たちと、時間を取り戻そうとするモモの話でした。
それに比べてもこの「タングルレック」は、時間の概念が複雑です。
時間を自分のものにできれば、世界を、宇宙を支配できる、というのは同じようなのですが、その「時間」は、ただ一つのものなのかどうか、というとそうでもないらしい。
今流れている「時間」とは、別の「時間」もどこかにある。
どの「時間」が正しいのかはわからない。いや、たぶんどの「時間」も、その「時間」のなかでは正しいのでしょう。

と、どんどんわけがわからなくなるのです(^◎^;)
でも、「今」という世界が、どこか別のところで、全く別の「今」があったら、ちょっと楽しいかもしれません。
もうちょっとマシな世界があるかも、などと考えるとね。

物語は、ハッピーエンドなのかどうなのか、微妙なところなのですが、現在のところ、わたしたちは今流れている時間の中でしか生きていくことができないので、現実をありのまま受け止めるという覚悟と責任があるのかもしれません。
ということを考えさせられる物語でした。

やっぱり子供には難しすぎるかもよ(^◎^;)



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