2015年8月20日木曜日

【よだかの片想い】島本理生(集英社)

さて、では島本理生を読んでみましょう。
最近(2013年)出版の「よだかの片想い」。

顔にアザのある女性アイコは、コンプレックスから周りの人たちと上手くコミュニケーションが取れずにいる。
大学の物理研究室で研究を続けることで、他人との交わりはますます薄くなっている。
そんなおり、アイコのような女性にスポットを当てた映画作りの企画が持ち上がり、アイコは雑誌の表紙になり、やがて映画監督と知り合い、そして感情の揺れを覚えて。。

という、まあ筋書きを書くと、よくある「コンプレックスを持った女の子の恋愛物語」ということになるんでしょうけど。
コンプレックスを持つことがどういうことか、ということを考えさせられますね。

よくあるのは「こういう私だから、今の私がいる」と、自分のコンプレックスを受け止めて納得する人。
。。。。一見、とても前向きそうに見えるけれど、本当かなあという気もする。
逆に、コンプレックスを抱え込んで「かわいそうなワタシ」でいつづける人
。。。。一緒にいるのが辛くなるんですけど。

じゃあどうすれば?
という答えは、実はないのですね。

人間誰しも、他人と比べて劣るなあと思うところもあるし、これだけは勝ってるよなと思うところもあるし。
ただ、その「劣ってるなあ」というのが、このアイコのように目に見えてわかってしまう時はどうなるか。自分にあてはめることは、ちょっと想像が難しいですね。

その、想像が難しいところに、あえて切り込んだのが島本理生なんでしょう。

あらすじだけでは陳腐な恋愛ものになるところを、ああでもない、こうでもない、こう考えるのでは、こう感じるのでは、と、作者が悪戦苦闘してアイコの心情に迫ろうとしているのがわかります。

結局答えはないんだけれど、とにかく生きていくしかないのは間違いがないのですね。
そういう意味では、ちょっと勇気をもらえる本です。


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